第二章 泣くなシンタロー!今日も夕陽は赤いのだ

第16話 エネルギー

わるもn

限界はすぐそこまできていた。

ふらふらのレッドに小仏がレッドに駆けよった。

「レッド、こいつらは私たちが引き止めるわよっ!」

録音の声が再生されている間に、小仏はマスク越しにレッドに囁く。

「気をしっかりもてッ」

聞きなれたおネエ口調ではない野太い男声に、真太郎は我に返った。

「フォローできるところはする。無駄に動くな。ブレードさばきに集中しろっ」

小仏のするどいささやき声にうなずくレッド真太郎は、力の抜けたたこぶしを再び握りしめ、ゆっくり近づいてくるクロガネショーグンを見据える。

「ぼくのエクスパンチを・・・」

こぶしを固くにぎりしめる。余計な動きばかりだった砂川よりも気迫がこもっている。それはただ、疲れて動けないだけなのだが、却って敵に向かって真剣に気迫を飛ばしているかのような、緊迫感を醸し出している。

「受けてみろおっ!」

パンチをくりだした瞬間、よろけるレッド真太郎。ショーグンからかなり離れた距離を空振りするパンチ。しかしとっさに腰を落とし、よろけたこぶしを己の身体に当たったようにリアクションを取るクロガネショーグン。

《ガツン!》

タタキの箕浦が、打撃のSEですかさずフォローする。

首をぐるぐる回し、肩をいからせ、本気になった様子を体現しながら、レッドにじりじりと近づくクロガネショーグン。

「レッド危ない。気をつけて」

いいタイミングでピンクの声がかかって、どうにかクロガネショーグンの反撃にいけそうだ。

「コウテツ・・・衝撃波ッ」

この流れはいままで通りだ。クロガネショーグンが両手を掲げ、SEとBGMが高まる。

「どうしたっ」

「揺れているぞッ」

「みんなッ気をつけてっ」

地面が揺らぐ様子を表現する一同。砂川のレッドはびくともしていなかったが、レッド真太郎はなにを思ったか、動揺するどころか、すべてを放り投げて、地べたに身体を放り出した。

どうやらそれは一瞬の「休憩」ということらしかった。

たしかにこのタイミングなら、ばれないようにほんの少しだけ休める。

あきれるやら感心するやらで続くアクションに移るテラ。

「ううううー・・・ハアッ!」

クロガネショーグンが両手を広げる。

《どーん!》

SEとカノン砲で皆がふっとぶ。大歓声の客席。

このアクションをきっかけにして、全員が舞台上からはけていった。
ここから先は、砂川レッドのときとはアクションの段取りが違う。

BGMがチェンジし、レッド真太郎がひとり、ダウンステージにかけ出してくる。その手には必殺武器のエクスブレードだ。反対の袖から駆け込んでくるクロガネショーグン。

レッドとステージ真ん中で切り結ぶと、クロガネショーグンだけが宙に舞いあがる。高所恐怖症のレッド真太郎は、地上に残ってブレードを構えている。

その時、観客の歓声があがった。



残る四人のヒーローたち全員がワイヤーを装着して、上空から登場したのだ。逆転の発想で、観客には、地上に陣取るレッドの方が主役に見えないこともない。

前代未聞、四対一の空中戦がはじまった。空中戦でダメージを受けたショーグンが地上に降りようとすると、ひとり地上を守るレッドがエクスブレードで応戦する。

一方、舞台袖は、ツブテ役のクルーも手を貸して、合計五人のフライングでてんてこ舞いになっている。客席の盛り上がりは最高潮だ。

クロガネショーグンがなかなか降りてこないときは、真太郎はレッドの名乗りの決めポーズを見せる。客席からは津波のような笑いと歓声に包まれる。

やがてクロガネショーグンがメインステージに舞い降りると、四人ヒーローたちもメインステージに着地する。

「グハハハ、まだまだよ、エクスチェイサーども」

「負けるものかっ! 僕たちの力を合わせるんだ」

レッドの呼びかけで四人のヒーローがレッドの元に集結する。

「エクスパワー、オン!」

掛け声でエクスブレードにパワーを込める。

《ギュルギュルギュルギュルギュル》

エネルギー充填音に紛れ、奈落が口を開く。

「フルパワー充填!」

ブレードを両手で構えて、クロガネショーグンに渾身の一撃を叩きこむレッド真太郎。

《ザキーイイイン!》

「うがああああ!」

クロガネショーグンが、一撃のあおりを受けて上空に舞い上がる。トップステージに足をかけて、もだえ苦しむアクション。その隙にワイヤーを外す。

続いて、メインステージでもう一度、渾身の力でブレードを振るレッド真太郎。

「とどめだあああッ」

ブレードから放出された波紋のような五色の光の帯! イノさんとそのチームが徹夜で仕込んだ照明効果が、トップステージでもだえるクロガネショーグンを直撃する! 

まばゆい光を浴びながら、クロガネショーグンはうなり声をあげ、高速のきりもみ状で奈落に落下していった。同時に激しい爆発音が場内を包んだ。

拍手はいつまでも続いていた。