フハハハハハハハ!
高らかな笑い声と共に、トップステージにキャプテンコンゴーが再登場してヒーローたちを見下ろす。
「キャプテンコンゴー! 今度こそ決着をつけてやるっ」
「いくぞ、エクスチェイサー!」
今、テラの代わりにコンゴーに扮しているのは真太郎だ。
「よし! 最後のエクスチェンジだ。みんないくぞ!」
四人が鋭く頷いて、叫ぶ春原。
「エクスチェーンジッ!」
めまぐるしい照明とSEで、再びの変身が盛り上がった。激しい点滅のあと、変身したエクスチェイサーがポーズを決める。
「エクスレッド!」
「エクスブルー!」
「エクスイエロー!」
「エクスグリーン!」
名乗りを上げてポーズを決めるエクスチェイサーたち。
しかし観客はまたもざわつく。
それもそのはず、変身を終えた今度は、エクスピンクが姿を消しているのだ。
そのために待機していた小仏は奈落のベンチで横たわっていた。
なんと小仏は、奈落の蓋の開け閉めで腰を痛め、動けなくなってしまったのだった。
「私がやります!」
そう言って未緒は真太郎が脱ぎ捨てたコスチュームを抱えて楽屋に駆け込んでいった。
最後の決め技、エクスボンバーは五人揃っていないと決められない。
ピンクが出てくるまでの間、またも時間をかせぐ必要があった。
「やいっ! キャプテンコンゴー!」
最初に口を開いたのは、イエロー=岡倉だ。
袖で舞台上の様子を見ながら、アドリブでセリフを送っているのだ。
「聞けぇい! キャプテンコンゴー」
キャプテンコンゴーは無言でエクスイエローに向き直る。
「今日でついにおしまいなんだぞ!」
キャプテンコンゴーは拳を握ってエクスレンジャーたちを挑発するポーズを取る。
「いつも戦いはすんごい大変だったけど、俺達も闘いの中で成長したぜ」
「ああそうさっ!」
松崎が続いた。
エクスグリーンに向かって踏み出すキャプテンコンゴー。
「お前たちをやっつけても、また別の戦いがあると思うけど、お前たちの事は忘れるわけにはいかないぜ!」
春原と麻田も声をあげる。
「そうだっ! 俺たちはっ、ここでの戦いをずっと、ずーっと忘れないからなっ」
うおおおおおっ! マイクを通さない真太郎の唸りが響いた。
「行くぞ、エクスチェイサー!」
ようやくエクスピンクがステージに駆け込んできた。
ピンクに扮しているのが未緒だということは、テラにもすぐにわかった。
小仏や真太郎と違って、その胸のふくらみは硬い詰め物ではなかった。
身体のラインがはっきりと分かる、伸びやかな肢体をぴったりとしたコスチュームに包んだ娘に、テラは呼吸困難に陥った。
「全員そろったぞ! 必殺のエクスボンバーだ」
レッドの言葉に四人が頷いた。
まずはエクスブルーが即宙アレンジで、
「エクスブルー、パワー充填!」
と叫んでエクスレッドの前に立つ。
続いてエクスグリーンがハンドスプリングで、
「エクスグリーン、パワー充填!」
そう叫んで位置に立った。
イエローがバク宙で、
「エクスイエロー、パワー充填!」
と肩をいからせて立つ。
最後のエクスピンクは、未緒だ。
「イズモっ」
レッドの声が響く。
真太郎はキャプテンコンゴーの中で思わず前のめりになる。
練習を重ねてやっとこなせるようになったバタフライツイストなど、とうてい未緒はできるはずがない。
しかし未緒は、真太郎のやっていたように、大股に駆け込んできて、身体を傾け大きく踏み切ってジャンプした。
いけえええっ!
真太郎はコスチュームの中で思わず叫んだ。
頭の中で自分が技をこなしているようにシュミレーションしながら未緒を見つめる。まるで未緒がその思いにシンクロするかのように身体をひねった。
いけるっ!
僕たちはバディだ。
僕のイメージのままにっ!
だが、そこで未緒はバランスを崩した。
あっわわっわあ!
体勢を崩して、頭からステージ床に突っ込んでいきそうになった未緒に、真太郎は自分が敵役になっているのも忘れて駆け寄ろうとした。
しかし。
そんな未緒をしっかりと抱きとめたのは、エクスレッドだった。
さすがに、これまでレッドとピンクの接近に寛容だった観客からも、ブーイングが起こった。
怒号さえ混じった客席の非難の声と、冷ややかな視線を浴びながら、真紅のヒーローに抱きかかえられた未緒は、思い出していた。
あのときのことを、はっきりと思い出していた。

レッドマスクのヒーローは
あたしを おひめさまだっこした
レッドマスクのヒーローは
あっというまに
パンチとキックで
あっというまに
怪人をやっつけた
あたしは おひめさまだっこ されたまま
レッドマスクのヒーローに きいた
あたしが ピンチに なったとき
また たすけに きてくれる?
レッドマスクのヒーローは
なにもいわなかったけれど
レッドマスクのヒーローは
おおきく うなずいてくれました
(完)